卵油とは?

卵油は、ニワトリの卵の黄身を時間をかけて炒りあげていくと抽出することのできるエキスです。色は黒くトロリとした液体です。黒く焦げた黄身の中からジワッとにじみでてきます。昔から貴重な健康食品としてあの“梅肉エキス”や“粉末ニンニク”と並び、それぞれの家において自家製のものとして作られ、利用されてきたのです。

私たちの体は膨大な数の細胞により成り立っています。その細胞を健康にすることは、私たちの体を健康に導くことになります。そして、それには細胞のすべてが充分に栄養と酸素を摂取して、新陳代謝が活発におこなわれているということです。
卵油は、すみずみの細胞に栄養と酸素をいきわたらせ、その働きを活発にする健康食として、親から子、人から人へとつくり方が伝えられました。長い年月にわたり、家庭でつくられ、培われてきたということは卵油が本物であり、人々を納得させる力を持っていたことに他なりません。

卵油には、血管にたまっている余分なコレステロールを取り除くオレイン酸をはじめとした不飽和脂肪酸やビタミンE(トコフェノール)、細胞を形づくるのに必要な基礎成分であるレシチンといったリン脂質がたっぷりと含まれています。私たちの健康づくりに欠かすことのできない栄養素を取ろうと思うとき卵油は目を離すことのできないものになります。

卵油が初めて活字として紹介されたのは『赤本』と呼ばれて有名な「家庭に於ける実際的看護の秘訣」(大正14年に初版発行、今でも発行されています)によってです。以来、文献や実体験により、卵油が血のめぐりを良くして体調をととのえ、健康の維持や病後に良いものとして、愛用され今日にいたりました。

大正14年発行・築田多吉著『家庭に於ける実際的看護の秘訣』のことです。当時は全国的に普及し、一家に一冊必須の家庭医学・看護のバイブルといわれ、以後実に1600版を重ねました。その「赤本」には、卵油は次のように紹介されています。「この油の製法は黄身が焼ける迄炒めると油が出ます。混ぜ物のある製品は効きません。」「卵の油が効くから卵を食べても効くだろうと考へて問ひ合わせる人がありますが、卵と油はぜんぜん成分が違ふから、卵を食べても駄目です。」

卵油の主な成分は、レシチン、ビタミンE(トコフェノール)を豊富に含む、油脂分です。油脂分は不飽和脂肪酸であるリノール酸、オレイン酸を中心としたものです。これらは私たちの体の細胞の壁をつくる物質のひとつで、細胞の壁を丈夫にすることにより、細胞の働きや免疫力を向上させる働きがあります。

レシチンは、体の細胞すべてに存在しており、物質の吸収や排泄、呼吸作用や解毒作用、エネルギーの代謝といった生命の基礎的な働きに必要な物質で、唾液や胃液の分泌、細胞の入れ替えといった体の働きにかかわっています。レシチンを摂るようにしていると、細胞の新陳代謝が良くなり、体からの分泌物が増えるので、みずみずしい体を保ち、老化の進行を遅くすることにつながります。また、血中のコレステロール分を細かくして詰まらないようにしてくれます。
さらに大きな働きは、筋肉をやわらかく、しなやかにして、動きをスムーズにすることです。その結果、筋肉の固まりでありながら不随意筋であってコントロールできない心臓の働きもよくしてくれます。

ビタミンEは油溶性であり、肝臓や脂肪を多く含む組織-心臓、筋肉、睾丸、子宮、血液、副腎、脳下垂体などに貯蔵されています。ビタミンEの効用のうち最も注目して良いのが、強力な抗酸化作用で、酸化による細胞の老化を遅らせることで、若々しい容姿を保つのに欠かせないといわれています。他に、血液凝固を防ぎ、それを溶かすことや、疲労を和らげるという働きもあります。
ビタミンEをたくさん含む食物は、小麦胚芽、大豆、植物油、ブロッコリー、ほうれん草などの緑色葉野菜、そして、卵です。多不飽和脂肪酸を含む油(魚の油等)を多く摂る食事をしている人、塩素殺菌された水道水を飲む人、更年期にさしかかった女性は積極的にビタミンEの摂取量を増やしましょう。

卵油にはコレステロールが含まれていますが、卵油1グラムあたりの含有量はわずか25ミリグラムです。通常は、食事から1日300~500ミリグラムのコレステロールを摂取しているのですから、これは問題にならない量です。

もともと肝臓ではコレステロールが生成されており、食事で摂取される量は肝臓で生成される量の10%程度でしかありません。それよりも、レシチンなどによってコレステロールの低下がはかれるのですから、卵油に含まれる量は無視できる程度なのです。

血液中に含まれる脂肪分が酸化すると過酸化脂質となり、血液の循環を滞らせ、、身体のすみずみに栄養分や酸素が行き渡らなくなります。その結果、細胞が老化を始め新陳代謝も不活発となって、体調全般が落ちます。 年配の方の顔に現れるシミ、老人班も細胞の活性化が衰えて老化色素が沈着したもので、血液循環が大きく影響しています。つまり、体内の脂肪分の酸化を防ぐビタミンE(トコフェノール)を含む卵油は老化防止の食品として理想的なのです。

卵油レシチンの構成成分の一つであるコリンは神経伝達物質、つまり正常な神経の成長に欠くことのできないものです。特に物忘れなどの原因に、コリン誘導体であるアセチルコリンの不足が関わっていることが報告され、コリンの摂取による予防が注目されています。

卵油に含まれるレシチンは血液循環を促進する働きとともに、脂肪の消化も助け、コレステロールを細かく砕き、その上、善玉(HDL)コレステロールを増やす働きがあることが分かっています。卵にはコレステロールが含まれていますが、黄身に含まれている多量のレシチンによる効果の方が、様々な疾患予防につながります。

みずみずしい肌を作り出すには、肺が水分でたっぷり湿り気を持っており、その湿り気に酸素が溶け込んで身体のすみずみに運ばれる必要があります。しかし、年をとると、体内の水分含有率がいちじるしく下がり、肺の湿り気が不足してきます。レシチンは肺の中の水分確保に大きく関係しているらしいことが最近の研究で分かりました。美容と肌荒れに気を使う女性はレシチンをたっぷり摂りましょう。