にんにくと言うと、誰もが体にいい食品であることを認めます。
巷間に伝わる食べ物と健康の因果関係については、眉唾や伝説もあり半信半疑といったところもあるのですが、こと、にんにくに関しては、誰もが、その効果を実感しております。にんにくはユリ科の多年草で、主として根の部分を私たちは・にんにく・と呼んで用いていますが、茎も食用になります。にんにくの原産地は、諸説ありますが、中央アジア及びインド辺りと推定されています。学名は「アリウム・サティウム」です。アリウムはラテン語でにんにくという意であり、サティウムは「栽培された」というような意味の言葉です。

にんにくは、ネギ属の仲間で、にら、玉ねぎ、らっきょう、エシャロット、あさつきなどと同系列の野菜です。しかしどの仲間も、栄養食品でありながら、にんにくほどの強烈な個性を持たないため、いうならば中途半端です。誰にも愛されるがそのパワーに、にんにくほどのパンチ力がありません。

にんにくは、嫌う人には徹底的に嫌われるが、愛される人にはにんにくなしには夜も日も明けないというほどに珍重されます。多くの健康食品は、長期間食することによって、じわじわと効果が現れてくるのに対し、にんにくは、驚くべき速効性と薬効があり、食べた人は、確実に効果が実感できるのです。疲れた時のひと口で、もりもりと元気が出てくるのがにんにくというわけです。例えば寒い冬に、にんにくを焼いて食べたら、体中がほかほかと暖かかったというような体験談を多くの人が語ります。疲労で無気力になっていたのに、にんにくを食べたら頭がカアッとして、やる気むらむらと語る人もいます。食べて、短時間でその効果を実感できる、不思議なパワーアップ食品こそが・にんにく・というわけです。

にんにくは確実な効き目を実感できますにんにくは、その効き目と同時に、その風味は、食物の味を引き立て、かつ、殺菌作用が強力なので、薬味、調味料として世界の人びとに愛されています。また、ビタミンB1の吸収促進、タンパク質の消化、新陳代謝の活性化、悪玉コレステロールの分解、利尿作用、便通促進と、まことにいいことずくめです。

何とも強烈な匂いだが、これを食べると疲れもとれるし、病気にも効く。いったいこの“にんにく”なる植物は、いかなる成分を有しているのか? 多くの学者は、以上のような疑問を持って研究に取りかかりました。
薬学研究が発達していない時代には、にんにくはこの匂いがある故に“効く”と、単純に考えられていました。そういう意味でミステリアス。摩訶不思議な食べ物が『にんにく』と考えられていたわけです。
にんにくの研究は、ドイツの化学者ゼムラーによって、今から約百年前の1892年に本格的に始まりました。研究の第一段階は、にんにく効果の主因と考えられていた匂いの解明が主眼で、ゼムラーは「ジアリルジサファイド」を発見。同じくドイツの学者ルンドクウィストは「アリイン」を発見しました。やがてアメリカのカバリット博士などが研究に参加し、1944年に「アリシン」という物質を抽出することに成功しました。実はこの物質こそ、にんにくの抗菌性を証明するものでした。

ヨーロッパでペストが猛威をふるった時、にんにくを多食した人には罹患者が少なく、にんにくは神秘的な魔除けの食べ物と考えられていたのですが、「アリシン」の発見で、にんにくには、もともと抗菌作用があることが解り、人びとは納得しました。
日本でも1950年代からにんにくの薬理研究が盛んになり、理研科学の創始者小湊潔博士がスコルジニンという薬効成分を発表したり、京都大学の藤原元典博士がビタミン研究の権威として知られる松川泰三博士との共同研究で「アリチアミン」の結晶を抽出して“アリナミン”と呼ばれるビタミン剤のヒット商品をつくり出しました。
1970年頃から、制癌に有効と言われるゲルマニウムが多量に含まれていることが指摘されています。
他に、70年代に入りますと、インドのジェイン博士他多くの学者が、にんにく成分の動脈硬化予防、血小板抑制作用などについても、貴重な研究成果を発表しております。

24時間闘うビジネス戦士や、ハードな家事労働に従事する主婦にとって疲労は禁物です。今日も明日も、それ行けGOGOの働き蜂には、にんにくの滋養強壮効果こそが救いの神といったところです。少し疲れたかな?と思ったらためらわず「にんにくさん出番ですよ!」というわけです。
ギリシャの歴史学者によると、古代エジプトのピラミッド建設に従事した奴隷が、過酷な労働に耐えるために、野生のにんにくを食べていたといいます。あの天を突くピラミッドの壁面には、奴隷の流したにんにくの汗と涙がしみついているというわけですね。
にんにくは、まさに偉大な労働力の源泉ということになります。

どうもおとろえを感じるなとか、もう少しなんとかしたいなと考えた時には、すぐに「にんにく」コールをしてみることです。
にんにくは速効性があり、かなり期待がもてるものです。
中国漢方薬草学の古典である『本草綱目』には「にんにくを生で食すれば怒りが内にみなぎり、煮て食べると性欲が高まるので、仏教や道教ではにんにくを禁じている」と記述されています。怒りが内にみなぎるというのは、カッカッとして闘争的になるということでしょう。
にんにくには速効性があるので、食べて何時間かすればみるみるうちにという可能性もあります。しかしにんにくのすぐれているのは、体の中から効いてくるという点です。

風邪はどんな場合でも体力が弱っているときにかかりやすいのです。その点を考えるならば、常日頃よりにんにくを常食して体力をつけておくことが大切です。
また、ちょっと風邪気味かなと思ったら、いつもより多めに、あるいは積極的に、にんにくを食べるようにすることです。
とうとう本格的に風邪をひいてしまったら、そくざに「にんにくさん」の出番です。にんにくとねぎのみじん切り、みそ、削り節を練り合わせて熱湯をそそいで飲むというのは、日本古来からの民間療法です。
熱をともなう風邪には、体を温めるにんにくは、悪寒の防止になり、また発汗させることで解熱の役目も果たします。

病気になれば、体が弱り体力がなくなるのは当然のこと。仮に病気が治っても、すぐには体力は回復しません。そんな時こそ、にんにくさんの出番です。
にんにくそのものに強精、強壮の効果があるばかりではなく、消化器官を刺激し、食欲を増進させます。そのためにバランスの良い栄養補給に大きな力を発揮いたします。

にんにくには、消化器官を刺激し、食欲を増進させたり腸を整える働きがあります。便秘体質の人は、にんにくを常食することで便秘を防ぐこともできます。また、便秘になった場合にんにくを多めに食べることで解消することができます。
にんにくの整腸作用は、アリシンが大腸を刺激して、消化の働きを助けるのがその主な理由です。
便秘ばかりではなく下痢にも効果がありますが、下痢の場合は、生にんにくではなく、焼いたり煮たりしたものを少量ずつ食べるようにすべきです。

意外に思われるかもしれませんが、にんにくは二日酔いや二日酔いの防止に効果があります。お酒を飲む前ににんにくを食べておきますと、不思議なことに翌朝、胃腸が快調です。実は、にんにくは肝臓を守る力があるからです。
肝臓で作られる酵素のGOT、GPTが、正常な数値を保っていれば、機能は正しく働いているのですが、機能が弱ってくると、一挙に数値がはね上がります。この数値を測定することによって、肝機能の正常、異常を判断することができます。この数値の一定以上の人ににんにくを一ヶ月間常食させたところ、全員が正常値に戻ったという実験結果が出ています。
「ちょっと飲み過ぎたかな」と思ったら、迷わず「にんにくさん出番ですよ」をお忘れなくどうぞ。

にんにくには殺菌(抗菌)力がある。生の魚や肉を食べる時、にんにくを合わせて摂れば食中毒を防ぐことができます。
単に中毒防止だけでなく、味を引き立て、ビタミンなどの栄養素の有効な吸収を助ける働きもします。
さらに、にんにくは、ぎょう虫などの虫くだし効果もあります。これもにんにく成分のアリシンの威力です。
サラダや生の魚肉を好んで食べる人は、体内に寄生虫がいることが多いのですが、にんにくによって虫は活力を失い、やがて死滅して排泄することができます。

意外に思うかもしれませんが、にんにくは不眠症傾向にある人にも効果があると言われております。その原因は、はっきりとしない面もありますが、その匂いにあるのでないかと言われております。にんにく独特の臭気が、精神安定の効果をもっているのではないかというのです。
理論的には匂い成分のアリシンが、神経細胞のリポイドに作用して興奮を鎮めるのではないかと考えられています。

にんにくを多量に食べる国というのは、だいたいにおいて寒い国か暑い国です。
理由は、にんにくが寒さをしのいだり、夏ばてを克服するのに適した食べ物だからと言っていいでしょう。
足が冷えて眠れないという人が、にんにくを食べるようになってから足の冷えがなくなったと語っています。同様に、夏になると急に食欲がなくなり、体力が落ちるという人が、にんにくを食べるようになってから、食欲が衰えず、体調良好だというのです。